「お昼に会うの初めてだね」

「そう、ですね」

「この前話してたこと、都合が良い時でいいからよろしくね」

「……はい」


 夢じゃなかった。デッサンモデル、それともハンドかもしれない。どんな絵のモデルなんだろう。

 強い視線を感じて徐々に顔が強張る。
 何か圧をかけられているような。噂の時とは違う目がある。


「おい、星名のこと拉致(らち)ってんじゃねぇよ。購買にいねぇから探したぞ」


 低くて太い声に体がすくむ。
 背が高くて堅いの良い男子生徒は、隣にいる女の子たちを見ていた。


「別にいいじゃない。湊くんはみんなの湊くんなんだから」

「また意味わかんねぇこと言い出した。お前が優しすぎるから女子が付け上がるんだぞ。迷惑な時はちゃんと断れ」

「なによそれ! 湊くんはあんた達と違うんだから!」


 苦笑を浮かべる星名くんが、「騒がしくしてごめんね。じゃあまた」と言って男子たちと校舎の方へ消えて行った。

 どういう状況だろう。女の子たちが無言で立ったまま刺さるような視線は継続している。

「結奈ちゃん、行こっか」

 ずっと黙っていた比茉里ちゃんが私の腕を引く。いつもの弾けるような表情はなくて、顔色も良くない。


「鹿島さんって、あなた? ちょっと聞きたいことあるんだけど」


 可愛らしさの欠片もない、どすの効いた声が降ってきた。