ふと目が合い、私は慌てて視線を逸らした。伏し目がちな瞼が、幼いながらに色っぽく感じる。

 マフラーで口元を隠すと、彼らと距離を作るように小幅になった。

 人見知りで、特に男子に緊張する性格を直したい。そうだ。入学する前、私はそんなことを思っていた。

 後ろを歩いている子が、私の肩に触れようとしている。声を掛けるつもりが、どうやら寸前でやめたらしい。

 陶器のような白い肌、ガラス玉のように綺麗な瞳。全体的に色素の薄いその男の子は、まるで天使のよう。

 引っ込められた手には何かが握られていて、彼の友達らしき人が肩を突いた拍子に地面へ落ちた。龍の刺繍が施されているお守りだった。

 受験祈願に私がお婆ちゃんから貰った大切な物。どこを探しても見つからなかったお守り。

 どんどん先へ進む私と距離が出来ていく。

 どうして、声をかけてくれないの?
 落としたと渡してくれないの? 


 知っている気がするあなたは、誰なの?