高校受験当日。澄み渡る空は青く、空気は凍てつくような寒さだ。
　慣れない電車に揺られ、私は緊張した面持ちで受験会場へ向かっている。

　これはなんだろう。第三者の位置で、自分の姿を見ている。
　いわゆる死ぬ前に見るという走馬灯というものだろうか。

　さまざまな学生服を着た中学生たちが、空泉高等学校へ集まって来る。

　艶やかな栗色のポニーテールをした明るい雰囲気の子や、小麦肌に色素の抜けた赤黒い髪をした不良っぽい女子。

　背が高くて、一瞬男女どちらか分からない中性的な顔立ちの子。

　知らない顔ばかりなのに、知っているような不思議な感覚。試験を受ける前から息が尽きそうだった。


「ちょっと、もっと離れて歩きなさいよね。他人の振りしてって言ってるじゃない！」

「……何だそれ。意味不明」


　前方を歩いている男女２人が言い争っている。猫っ毛の髪を２つにまとめて、化粧をしていなくても派手めな顔立ち。横顔でも目で追いたくなる可愛らしい女の子。

　その隣りを歩く男の子は、彼女と同じくらいの背丈でさらっとした黒髪が目を引く。