すぐ向かい側にあるカフェ。そこの季節限定デザートが人気だと聞き、これから向かうことになっている。

 遠目から見ても落ち着きのある洒落た外観で、いかにも女の子が好みそうな店。


「結奈ちゃんとこのカフェも、苺フェアってしてるの?」

「うん、苺の時期だからね。昨日も苺ケーキのスポンジばっかり焼いてたよ」

「パティシエって大変そうだよね。結奈ちゃんのケーキ、今度食べに行くよ」

「そんなっ、私なんてまだまだ! 今は基礎の勉強してるところだから」

「じゃあ、今から予約しておくよ。楽しみに……」

「いつか作るから。待って……て」


 横断歩道に差し掛かった時、湊くんの異変に気付いた。まるで夢が覚めたような顔つきで、目を見開いている。


「……湊、くん?」

 プップップッーーッ!
 後方からクラクションの鳴り響く音が聞こえた。

 振り返った瞬間、大きなトラックが突進してくるのが見えて。その瞬間には、彼に庇われるように倒れていた。

 電柱に衝突した大きな衝撃音と、ガラスが砕け散る音が耳に響く。

 ほんの数秒の出来事で、一瞬にして視界は真っ暗になった。