しばらく歩いて、モナの池へ着いた。透明度の高い湧水の中に、美しく咲く睡蓮と鮮やかな鯉が泳いでいる。

 フランスを代表する画家・モナの代表作に似ていると言われ、彼の名前から付けられたらしい。
 群青色の空が水面に反射して、より美しく輝いている。


「すごくキレイ……。絵が動いてるみたい」

「この世から自分の存在がなくなってからも、こうやって作品が後世に受け継がれていくって、すごいことだよね。モナも、想像してなかったんじゃないかな」

「……そうだね」


 絵に命が吹き込まれたような池は、どれだけ見ていても色褪(いろあ)せることはなく、目の前の現実を夢現(ゆめうつつ)にした。

 カフェへ向かう前に、隣の敷地にある神社へ立ち寄ることになった。まだ時間に余裕があったのと、湊くんがその神社に興味を持っていたから。

 紅い鳥居を潜ると、すぐ手前に見えてきた手水舎で身を清めた。参道を進みながら、懐かしさが込み上げてくる。

 昔、ここへ来たことがある。

 スイーツコンテストで良い結果を残せるように、周さんと参拝へ訪れた白髭神社だと思い出した。