「……顔に絵の具でも付いてる?」

 触れ合った瞳に困惑して、慌てて首を横に振る。
 熱いものが胸の奥から湧き上がってきた。まさか見惚れていたなんて口が裂けても言えない。

 濡れた手を拭く仕草さえ爽やかで色っぽくも映る。おかしなフィルターでも付いているのかな。


「イメージは浮かんだ?」


 座っている私を覗き込むようにして、星名くんの顔が近付いて来た。


「えっと、なんと……なく」

 見る場所がない。胸の高鳴りを抑えようと肩で息を吐く。

 やっぱり男の子と話すのにまだ慣れない。

 優しい風が吹いたみたいに、彼の指先が私の髪に触れた。口から心臓が飛び出そうになる。


「いい色だね」

 さらりと落ちていく髪に全神経が集中する。
 静かな空間に時計の秒針と私の鼓動だけが響いている。

 この心臓音、早く止まって!


「今度、鹿島さんのこと描かせてくれない?」


 一瞬フリーズしてからの高速瞬き。ハテナの疑問符が頭を囲っている。