吹き付ける風が入り込んでカーテンが舞う。私たちの間に境を作るように、湊くんの姿は見えなくなった。

 カーテンにまで嫌われているみたい。

 足元に真っさらな紙が落ちて来た。湊くんに渡したスケッチブック。
 今の風で飛ばされたのだろう。しゃがんで拾い上げると、裏に何か書いてあることに気付いた。


「…………ユナ?」


 読み上げた瞬間、心臓が震えた。そこには確かに、鉛筆で走り書きしたカシマユナの文字があった。

 ゆらりとカーテンが下りて、私たちを対面させる。穏やかに笑う湊くんは、前のままで同じだった。


「ずっと待ってた。中学生の時から、早く会いたくて。話すきっかけとか守らないとって思いながら、出会う瞬間を待ってたんだ」


 立ち尽くす私の手から、そっと絵を取って。


「この絵は、未来の結奈ちゃんだよ」


 何も考えられずに、ただ文章が頭の中を駆け巡っていく。

 女の人の正体は、わたし。
 湊くんの運命の人が、わたし?