勢いよく机に手を付く音と彼女の声が、静寂とした部屋に響いた。

 湊くんには未来が見えること。絵の人が彼の好きな人で、私とは友達でいたいと告げられたこと。下津くんは全てを知っているの?


「どう足掻いたって、湊と結奈ちゃんが幸せになる未来なんて作れないってこと」


 真っ直ぐ飛ばされた(こと)()が胸を貫く。

 どうしてそんなに否定されなければならないの?

 誰にも迷惑かけないように、伝わらなくてもいいから、ただ想うだけでよかった。この温かくなる気持ちを大切にしたかった。

 だけど、私は湊くんの特別になりたいと思ってしまった。


 見透かすような下津くんの目を、まともに見ることが出来なかったのは、後ろめたさがあったから。
 心のどこかから、もう終わりにしたい感情が溢れてくる。これ以上、湊くんに嫌われたくない。


「さっきから聞いてれば言いたい放題してくれちゃって! 結奈ちゃんがねぇ、星名くんのことどれだけ思ってたか知ってる? 急に態度変えて」

「比茉里ちゃん、もういいから」

「納得いく説明もらえないと、諦めるに諦められ……」

「じゃあ、湊がどれだけ悩んで出した決断だったのか。比茉里ちゃんに分かんの?」

「あ、あのっ……」


 パンッと短く張りのある音が鳴る。比茉里ちゃんの平手打ちが下津くんの頬を捉えていた。反動で反対側を向いた頬は赤くなっている。