……アメリカ?

 この辺りの国立だったら、杠葉(ゆずりは)大学か(はなぶさ)大学あたりだろうか。なんの疑いもなく思い浮かべた数秒前の自分が怖い。

 どうして近くにいると思ったのだろう。離れる選択をしないと、考えたの。


「……遠いね」

「しばらく、日本には帰らないと思う」


 見えない電車が走り抜けて行くみたいに、吹き付ける風が強くなる。

 寂しいね。

 もう会えなくなっちゃうの?

 行かないで。友達として、言ったらいいじゃない。

 でも、私の口から出たのは別の言葉。ずっと友達でいたい反面、この関係を続けることが苦しく思える。


 湊くんの未来に私がいないなら、いっそのこと忘れてしまいたい。


 草木が嘲笑うかのような音を立て、美しかったオレンジの空は悪魔の色が占めていく。