夕焼け空を見ていると、切ない気持ちになるのはどうしてだろう。
 紫とオレンジが入り混じる幻想的な色は、いつか見た写真の世界と似ていた。


 電車を待つホームに人影はなくて、まるで地球に取り残された最後のひとりみたいに静けさが刺さる。

 そこへ雨のようにしとやかな靴音が現れて、誰かが隣へ立った。


「久しぶりだね。元気だった?」


 枯れ木に花が咲く。モノクロから色付いた世界へ変わる瞬間。二週間ぶりに聞く湊くんの声は、それと同じくらいに鼓膜を震わせた。


「うん、湊くんも……元気にしてた?」

「少しバタついてるけど、なんとかね」

「……そっか」


 不自然なくらいに音を拾わないホームは、好きな人と肩を並べているのに孤独を感じる。

 手を伸ばせば、触れられる距離にいるのに、ーー遠い。


「卒業したら、製菓(せいか)系へ進むの?」

「……うん、そのつもり。湊、くんは?」


「僕は、ーーアメリカへ留学しようと思ってるよ」