小学5年生の時、仲の良かった友達がいた。お互いに、ゆーちゃん、みーちゃんと呼び合って。
 移動教室、体育のペア、クラブ活動。何をするにも一緒で、心から気の合う親友だと思っていた。

 でもーー。


『結奈ちゃんって、男子に可愛いって思われたいの? 良い子ぶってるし、笑った顔とか、なんかぶりっ子。ムカつくから、みーちゃんもう話すのやめてよ』


 トイレから戻った廊下で、クラスの女子が話しているのを聞いた。


『そんなことないと思うけど』

 みーちゃんが小さく言い返したあとに、彼女たちは嘘を吐いた。


『でも、陰で言ってるよ? みーちゃんって、真似ばっかしてきて嫌いって』


 割り込んで行けばよかった。そんなこと言ってないって、きちんと反論していたら、みーちゃんは私を信じてくれたかもしれない。

 目の前に立つ比茉里ちゃんが、あの時の彼女と重なる。誤解されたまま、大切な人を失うことが怖い。


「……湊くんのことは、好き、だったよ」

「だった?」

「下津くんは友達だし……ほんとに何もなくて。でも、比茉里ちゃんを傷付けたこと、謝りたくて。だから」

「ちょっ、ちょっとストップ! 結奈ちゃん、なにか勘違いしてない?」


 首を傾げる瞳からは、怒りの色は見えなかった。私が必死に引き出した(つたな)い言葉を脳内で再生するように、比茉里ちゃんはうんうんと頷く。

 炎が小さくなって、最後の花火に辿り着く前にフッと消えた。