「ああ……周さま、眩しすぎます! 絶対似合うと思ってファンクラブ1号として推薦させて頂きました!」

「賛成させて頂きました!」


 部長と2年の女子が、ビシッと敬礼のポーズを取る。


「や、やめてよ。そんな大げさな……」


 若干押され気味な周さんを見て苦笑していると、比茉里ちゃんが耳打ちするように体を寄せて来た。


「うち男子少ないし、主役は任せられないから誰かに頼もうってなって。初めは星名くんの名前も上がったんだよ」


 反応しかけた表情を抑えて、針を持つ手を動かす。
 考えてはダメ。湊くんのことは、もう忘れなければならないの。友達以上の感情を持たないように、気持ちの整理が着くまで。

 ドレスのチュールに星を縫い付けながら、比茉里ちゃんがさらに声を潜めた。


「でも私が却下したの。星名くんは人気あるから、相手役の子が女子の反感買うよって」


 その結果、周さんファンの部長がここぞとばかりに動いたらしい。他の部員も満場一致で即決だったとか。


「好きなことになると、あの子たちはいつもあんな感じで周りが見えなくなるから。 気が済むまでそっとしといてあげて」


 やれやれと言うように、比茉里ちゃんはハハッと笑って作業を続ける。


「だから、星名くんと見に来てよ」

「それは……ちょっと難しくて」

「何があったか知らないけど、〝本心を隠したまま後悔だけはしなさんな〟これ、うちのお婆ちゃんの口癖。まあ、私も人のこと言えないんだけど。お互い頑張ろ?」


 自分に言い聞かせるような言い方だった。下津くんのことを本気で好きになったかもしれないと相談されたのは、つい先日のこと。顔を真っ赤にした彼女が可愛らしくて、心から応援したいと思った。

 チクリと痛みが走る。指先から赤い花のような血がぷくりと出ていた。針で刺してしまったみたい。

 でもそれより痛むのは、胸の方。
 湊くんを好きと想うことすら、私は許されないんだ。