「だって鹿島ちゃん可愛いんだもん」

「あ、周さん……ちょっと近過ぎるよ」


 話すたびに耳にかかる息。心拍数がどんどん上がっていく。完全にからかわれている。


「ごめんごめん。はい、あげる」


 どこから出て来たのか、可愛らしいオレンジ色のチェック柄が目に飛び込んで来た。それは昨日、周さんが作っていたお菓子の包装紙。


「これ、あげる人がいるって」

「鹿島ちゃんのだよ。ずっと悲しそうにしてたから。元気出して」

「ありがとう……嬉しい」

「味の保証はないけど、心は込めて作ったから。鹿島ちゃんの笑顔を見れますようにって」

 誰かが自分の為を思って何かをしてくれる。

 それがどれほど勇気をもらい、素晴らしいことなのか。藤波くんへのクッキーの件で改めて教えられた。