人の少ない岩の奥地。静かに揺れる波の音が聞こえる。
 水着に着替えた私たちは、人の目を避けられる場所へ移動した。

 白のレーシーなブラトップ、パステルなブルーのフレアショートパンツは少し子どもっぽい印象を与えたかも知れないと、みんなの格好を見て気付く。

 黄色と緑の花柄ビキニが明るい性格と合っている比茉里ちゃんを始め、純白の生地で胸と両腰に花が飾られた美女ビキニを着こなす瀬崎さん。

 大人っぽい黒ビキニの上からロングスカートを巻いた格好の明智さんを、比茉里ちゃんが品定めをするように下から上までをじっと見つめている。
 オーディション会場にいる審査員のようだ。

 比茉里ちゃんの健康的な脚、瀬崎さんのマシュマロバスト。明智さんの美しい背中。なんだかハレンチだ。

 目のやり場に困っていると、少し離れたところで湊くんが立っていた。水平線に沈む夕日を眺めるように、ずっと遠くを見ている。

 手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れられない境界線がここにはある。

 静かに流れて来る視線が私の存在を捉えた。向けられた優しい顔も、決して特別なものじゃない。


「結奈ちゃん、水平気?」

「うん、大丈夫だよ」

「じゃあ、少し入らない?」


 この瞬間だけは、私だけに与えられたもの。胸へ打ち寄せる波が大きくなって、差し出された手をそっと掴んだ。
 そのとたん、凄まじい地響きと威圧が背後から迫るのを感じた。