「沙絢ちゃんって、結奈ちゃんとそんなに仲良かった? 好きが溢れてるな」

「んなっ! そんなわけ……」


 荒っぽい口調で言いかけて、瀬崎さんは小さく咳払いをした。「あ、あるわよ?」と、眉を上げながら唇を引き攣らせている。下津くんの隣に湊くんがいたからだろう。

 みんなに聞こえない程度のため息を吐き出した彼女は、低めの音程でつぶやく。


「バッカみたい。アンタなんか好きじゃないわよ」

「瀬崎さんは、湊くんのところへ行くと思ってました。ずっと一緒に行動するんだろうなって……だから、どうして私なんかと」

「あっそう。沙絢、湊くんにくっついてていいのね?」

「それは、嫌ですけど……」


 太陽の日差しを浴びて、海沿いを歩きながら火照る頬を触る。熱を帯びていたため、日に焼けないよう帽子を深く被った。


「沙絢だって、湊くんの隣歩きたいわよ。でも、正直怖いの」

「怖い……?」

「あのね、いくら沙絢だって無敵なわけじゃないし、悩むことだってあるのよ。湊くんの何気ない行動で、落ち込むことだってあるの」


 高いヒールのサンダルで、彼女は砂を蹴って歩く。白い砂がさらさらと足指の隙間から流れ落ちた。


「美人でスタイルも良い瀬崎さんが……ですか?」