見終えた頃には午後18時をまわっていて、用意していた夕食を食べることにした。
 映画の話で盛り上がっている周さんに、なかなか湊くんの話を持ち出せない。

 興奮が冷めない様子の彼女は、たぶん始まる前の話など忘れている。


「恋愛かぁ。あんな大恋愛なかなか経験できないよね」

「お互いの愛が凄いよね。周さんは恋して……る?」


 ピザを取る手が止まる。何も考えなしで、パッと出た会話に冷や汗が止まらない。


「……鹿島ちゃん。それ聞いちゃう?」

「言いづらかったら聞き流してくれていいよ」


 慌てて付け足すと、彼女は手招きしてグッと顔を近づけた。


「好きな人はいる。教えたの、鹿島ちゃんだけだから秘密ね」

「……そうなんだ。変な事聞いて、ごめんね」


 ううんと、周さんは穏やかに首を振る。
 秘密を教えてくれたと言うことは、友達として信頼してくれているから?

 なんだかとんでもない勘違いをしている気がして、口にしたハニーチーズの味が甘苦く感じた。