「でも今は、料理部に入ってよかったって思ってる。料理が好きになったし、みんなと会えたから。1番は鹿島ちゃんにね」


 不意を突かれ、耳元の囁き声に心臓が跳ねた。こんな絡み方をされると反応に困る。


「周さんや料理部のみんなと出会えて、もちろん私も幸せだよ」


 テレビ画面を見ながら笑みを浮かべる。映画が始まってしまったから。そういう理由にしておこう。


「鹿島ちゃんって、星名湊と仲良いよね」


 その名前を聞いただけで、頬は熱を帯びる。

「もしかして、星名くんのこと好き?」

「えっ、えっと……」

「ただの友達なら、その方がいいんだけど」

「それって、どういう……」


 ーー星名くんは、誰とも付き合わないよ。


 浮かび上がる想像が、速まる鼓動に拍車をかける。
 これは未来の言葉。この先、彼女から聞くことになるのだろう。

「終わったらね」と口を閉ざした周さんは、テレビへ視線を向ける。

 大好きな恋愛映画は集中することが出来なくて、感動するはずのシーンでも頭はすぐに湊くんのことを考えていた。もどかしさが募る。