「周さんと鹿島さん、高見さんのチームだったね。特に周さんと鹿島さんは今回が最後になるから、悔いのないよう楽しんで頑張りなさい。高見さんもいい勉強になるわね 」

「……はいっ!」


 お互いに顔を見合わせて抱き合う。

 入部してからの念願だったコンテストに出場する資格を貰えたことは、私にとって大きな分岐点でもあるの。

 何事にも消極的な自分を変えるチャンス。

 今回のお題は『大切な人へ贈るデコレーションケーキ』とされている。
「各自でアイデアを考えて来るように」と、今日の部活は解散となった。

 みんなが調理室を出ていく姿を見送りながら、私は後ろで手を振っている。
 訳もわからず、周さんに呼び止められていたから待っていたの。

 人のいなくなった部室は、外の声も聞こえないほど静かだった。


「やっとふたりきりになれたね」

 囁くような声で周さんが背中から抱き着いてくる。それに動揺して、「な、何言ってるの?」と顔を赤らめながら抵抗する。

 背が高くて雰囲気もどこか男の子っぽいから、距離が近いと妙な緊張感が生まれるの。
 普段はそんなことないのに、たまにある。