「あっ、デザートにケーキも作っちゃう?」

「……それ、いいね」


 お菓子の誘惑には勝てないらしい。フルーツ缶や生クリームをごっそり購入して、ぱつぱつになったエコバッグを抱えて1階へ上がった。

 パンツスタイルだと彼女の脚の長さが良く分かる。並んで歩くのが嫌になるほど。

 周さんの家は、帝駅からバスで少し進んだ場所にある。コンテストの練習をするために、一度だけ訪れたことがあった。

 その時とは少しばかり状況が違うため、今日は心の準備が必要なの。


「みんな帰ってくるの遅いから、遠慮しないで」


 女友達の家だと言うのに、動きがぎこちなくて表情も硬い。ふとした瞬間、男子に見えることがあったり。
 隣に立っている時のほら、その流し目は特に反則だよ。


「それにしても、やっぱり鹿島ちゃんの服装可愛いよね。レースにショーパンとか、僕には絶対に似合わない」


 妙な違和感が胸の辺りを通り過ぎる。
 はて、今のは聞き違いだったのかな。

 エコバッグから買ったものを取り出しながら、何事もなかったような顔をして。
「このちっこい背がまた可愛いなぁ」と、私の頭をポンポンする。

 不意打ちで恥ずかしさがやって来たので、思わず頭をすくめた。


「周さんは背が高くてカッコ良いから! そんな服も着こなしちゃうくらいモデルみたいって言うか。絶対に可愛い服も似合いそうな綺麗な顔してるし」


 焦りすぎて、何を言っているのか自分でも分からなくなっている。