「えっと、鹿島結奈(かしまゆな)と言います。一応……3年生なのでタメです。よろしくお願いします」


 ガタッと勢いよく立ち上がった比茉里ちゃんが、続けて声を張り上げる。


「3年7組、恵比寿比茉里(えびすひまり)! 趣味はMV鑑賞とショッピング!」

「やばっ、最後に押忍って付く勢い。受けるんだけど」


 また平然とした顔で地雷が落とされる。面白くなさそうに比茉里ちゃんが口を尖らせるけど、明智さんは気付いてなさそうだ。のん気にガムを膨らませている。

 涙を浮かべて歓笑していた瀬崎さんは、視線に気付いたのか女優かと思わせる早さで真顔になった。


「親しくもないアンタ達の女子会に、沙絢が1人で来る分けないでしょ。せっちーはいい子だから安心しなさい」

「第一印象は、すっごく感じ悪いけどねー」


 横を向いた比茉里ちゃんが、私に聞こえる程度の声でつぶやく。ははは、と苦笑するしかない。


「でさ、これは何の交流会?」


 落ち着きある低めの声が問いかける。包み紙にガムを出すと、明智さんは棒のついた飴を取り出した。まるで煙草をくわえているような格好に、思わず目がいく。

 この様子だと、彼女は何も知らされずに連れて来られたのだろう。主旨を知ったら、どんな反応をするのか。


「星名湊の情報交流会だよ」


 砂漠の真ん中に放置されたような顔をして、明智さんは手の動きを止めた。