帝駅を出てすぐにある学生が多く集うMプラザ。1階にあるBANA7(バナナ)カフェで、私の前に座っている瀬崎さんがアイスティーを飲む。


「で、きみら誰?」


 瀬崎さんの隣に座る女子が、落ち着いた声色でつぶやいた。
 顎下まである前髪は中央で分かれていて、背中まで伸ばされた赤っぽい茶髪は緩いウェーブがかかっている。

 横に大きな目は間隔が少し広く、鼻と口は小ぶり。ほどよく綺麗に焼けた肌。

 瀬崎さんが大人っぽくてどこか色気のある印象なら、この人はクールビューティーと言える。


「それは、こっちの台詞なんですけど。うちらは瀬崎さんを誘ったんだけど、どちら様?」


 飲みかけのバナナジュースを置くと、比茉里ちゃんは目の前にいるクールビューティーを見て首を傾げた。

 彼女は無表情のまま噛んでいるガムをプーと膨らませて、パチンと割る。
 見た目は近寄り難いヤンキーだ。全く縁のなかった人だから、接し方が分からない。


「あたしは明智小雪(あけちこゆき)。沙絢に頼まれてついて来たんだけど、きみら1年?」


 悪びれるような素振りなく放たれた言葉に、くくっと今にも吹き出しそうな声が聞こえる。瀬崎さんの反応に、比茉里ちゃんは眉間をぴくぴくさせて。

「タメで悪いか! 小麦肌で小雪のくせしてっ!」と突っ込みそうな勢いで前のめりになっている。

 気持ちは分からないでもないけど、と胸をはらはらさせながら、肩を小さくした私は口を開いた。