「どの口が言ってんの」

 低く単調な声が比茉里ちゃんから飛び出した。瀬崎さんのヒートアップは止まることなく、輪をかけて勢いを増す。


「ココアする気もないから教えたくもないの! とにかく、アンタたち。絶対黙ってなさいよ」


 言いながらビシッと人差し指を向けた。あまりの迫力に、私は無言で2度頷く。

 藤波くんは不器用そうだけど、根は悪い人じゃない気がする。体育祭の時も、彼女のことを心配していたから、あんな風に湊くんへ詰め寄ったのだと思う。


「て言うか、アンタたち! なんでここにいるの? 部外者は立ち入り禁止!」


 眉をキッと釣り上げて、内巻きのロブを耳に掛けると、瀬崎さんは立てた人差し指をリズム良く私たちへ向けた。

 何か思いついたように、比茉里ちゃんからパンッと手を叩く音が鳴る。嫌な予感がした。


「瀬崎さん、部活終わったら暇?」

「なんでよ」


 眉間にしわを寄せた疑心を抱く尖った声。見つめ合うふたりを、第三者の位置から見守っていると。


「女子会しよう!」


 真昼のように明るい声が弾むように落とされた。
 悪い夢でも見ているような、ぽかんとした瀬崎さんの表情がまだ頭に残っている。