夏雲が流れるように浮かぶ7月初めの土曜日。電車に揺られながら、窓に写る自分の姿を見る。

 膝丈の白いワンピースにデニムジャケットを羽織り、足元は黒いスニーカー。女の子らしさを意識しつつ、カジュアルっぽさを残した格好。

 ワンピースとスニーカーの組み合わせって、やっぱり変じゃないかな。

 朝起きてから、これで何度目のため息だろう。緊張を通り越して、頭がおかしくなりそう。

 絵のモデルをする約束で、湊くんの家へ行くことになった。
 ふたりだけで会うなんて、たぶん数分と心臓がもたない。


 帝駅に着くと、改札口の前で待っている湊くんの姿が目に入った。立っているだけなのに、フィルターを付けなくても絵になる。
 すれ違う人が、振り返ってまで二度見するくらい。

 気付いて手を振る姿と、口角を上げた優しい笑顔に胸がキュンと鳴る。


『僕の優しさは、見返りを求めているから』


 体育祭以来、その言葉が体に染み付いて離れない。