10分休憩、昼の時間。瀬崎さんが私を探している気配はないまま放課後になった。

 それより、今日はやたらと視線が強かった。

 移動教室ですれ違った時、昼の購買、図書館から帰る途中。

 気付くと藤波くんがいて驚いた。目で追っていた時より、偶然会う頻度が増えている。

 なんとなく避けるような態度をとってしまうけど、感じが悪いと思われているかな。

 先生に頼まれていたノートを職員室へ届けて、少し遠回りをする。

 美術室の前で足を止めるけど、扉は閉まっていて物音も聞こえない。

 湊くんがいるかな、と少し期待したけれど誰もいない様子。


「結奈ちゃん?」

 引き返そうとした拍子に名前を呼ばれた。聞いた瞬間から胸が熱くなる。

 背中越しに近付く足音。一度、鼓動を落ち着かせて振り返るとーー。

 湊くんと目が合った。そして、すぐ視線を床へ()らす。

 このうえなく悪いタイミングだ。自然な空気をまといながら、隣には瀬崎さんがいた。


「こんなところで、どうかしたの?」

「えっと……」