「それで、ストーブの灯油切れたって?」


平静を装いながらそう聞くと、「そうなの!」と一気に話し出す。


「今日急な残業になったでしょ。さっきやっと仕事終わって家帰ったらストーブ灯油なくてエラーになってて。
寒い中帰ってきたら家も寒いんだよ、凍え死ぬかと思った。
ガソリンスタンドは23時で閉まっちゃってるし、同期に連絡したら、みんなはまだ飲み会って言うし。
奈良くんだけ家に帰ったって遠山くんに聞いたから」


そこまでしゃべると西野は、「クリスマスイブなのに、ついてない」と言いながら一息吐く。


「電話くれたらよかったのに」

「したよ!けど繋がらないんだもん」

…ちょっと怒られた。
普段は感情的に怒るようなタイプじゃないので、よほど疲れたんだな思う。


「わるい、充電切れてた」


「あ、いや…私こそごめん。奈良くん悪くないのに。
悪いことばっかり続くから、イライラしてたみたい」


西野は、少し潤んだ瞳を誤魔化すように微笑む。

せっかくのクリスマスイブに、そんな顔しないでほしい、なんて思うのは俺のわがままか。
しゅん、と肩を落とす西野を慰めようと、背中に伸ばした手を思い直して引っ込める。