廊下を歩いてたら、遠くから人だかり。
先生が女の子達に囲まれてた。

背が高くて、格好いい先生。

いつものことなのに胸がちょっと、痛い。

俯き気味になってしまう姿勢。
近づいてくる、女の子達の声。

先生とすれ違うまであと三歩、
二歩、一歩……。

「木村さん、今日、日直だよね?
あとで化学準備室、いいかな?」
 
掛けられた声に顔を上げると、目のあった先生が短く頷いた。

「……はい」

「待ってるから」

「なんで、木村?」

「日直だからプリント配ってもらうんだよ」
 
遠くなる、声。
遠くなる、先生。

私はその場に、熱い顔で立ち尽くしていた。