「いっつも煙草吸ってるけど、美味しいの?」

「は?
なに?」

煙草に火をつけようとしていた手を止めると、彼は私を振り返った。

「だってさ。
結構高いでしょ、煙草。
でもいつも吸ってるし」

「んー?
……一本、吸ってみる?」

「……いい。
そこまで度胸、ない」

「度胸とかいるんか?
……じゃあ」

彼は煙草に火をつけ一度吸うと、そのまま空いた手を私の後頭部にまわし、……唇を塞いだ。

「……!」

舐められた唇に思わず口を開くと、口づけは深くなった。
口の中に広がる、苦い味。

「まあ、こんな味」

にやりと笑って長くなった灰を落とすと、もう一吸いだけして彼は煙草を灰皿に押し消し、新しい煙草に火をつけた。

「感想は?」

「……まあ、悪くない」

私の答えに彼はまたにやりと笑った。