「なに食ってんの?」

お茶時間、というか手の空いた午後、みんなでおやつを食べてたら彼が帰ってきた。

「アップルパイ」

「ふーん。
女は好きだよね、そういうの」

「そういうあんたは、甘いもの嫌いだっけ」

「そう。
……参考までにどこのか教えてくんない?
今度、差し入れに使いたいし」

「残念。
このアップルパイ、ものすっごくおいしいんだけど、彼女の手作りだから」

「ふーん」

ちらり、彼の視線が私へ向かう。
そのままつかつかと寄ってきて、私の前に立つ。

「なあ。
これ、もうねーの?」

「あ、うん。
ごめん」

「なら」

……がぶり、私の手にあるアップルパイに彼が齧り付いた。

「こりゃ、マジでうまいわ。
これだったら、俺にも食える」

にやりと笑う彼に、この先何度もアップルパイを作ることになるのはまた別の話。