「ううっ。
肩痛い……」

向かっていたパソコンから顔を上げ肩を回すと、激痛とともにごりごりと音がしそうだった。

「わるいね、付き合わせて」

「あ、いえ。
……こんなこと、私がするのに」

「いいよ、別に」

深夜の残業。
課長が淹れてくれたコーヒーに口をつける。
リムレス眼鏡の奥の、課長の目は仕事のときとは違い、優しいものになってる。

……ふたりっきり、だから。

「肩こり?
長時間、入力させっぱなしだもんね」

後ろに回った課長の手が私の肩にふれると、ゆっくりと揉みほぐしだした。

「あっ、あっ、そこ」

「ばか、なんて声出してんの。
誰かに聞かれたら誤解されちゃうでしょ」

「だって気持ちいいんだもん……」

私を見つめる、レンズの向こうの瞳に目を閉じた。
ふれた唇に漏れた今度の声は、弁明のできないものだった。