「ごほっ、ごほっ」

「どーしたー?」

咳き込む私の顔を彼が心配そうに覗き込む。

「……うん。
風邪、ひいたかも。
ちょっと喉、痛いし」

「大丈夫か?」

そっと彼の手が私の前髪をあげる。
次の瞬間、彼のおでこが私のおでこにふれていた。

「熱はないかなー」

……いや、近い。
近いですから!! 鼻先すらふれてしまいそうな距離。
どこに視線を向けていいのかわからずにきょろきょろしていたら、目のあった彼がにやりと笑った。

「やっぱ熱、あるわ。
だって顔、赤いし」

やっと額を離した彼は、わざとらしくそんなことを言う。
言い返したいけど、鼓動が早くてうまく声にならない。
それに事実、身体も凄く熱いし。

「無理しないで帰って寝ろ。
送っていってやるし」

にやりと笑う彼はとことん性格悪いと思う。
でもそれにドキドキしてる私も趣味が悪い。