「どうした?」
急に甘える咲に玲は困ったように微笑む。
「この場所で」
「ん?」
自分の胸の中でつぶやく咲の声に玲は耳を澄ませる。

「ここで一緒にいた時のことを思い出してたの。そしたら・・・ね・・・」
それ以上言葉にならない咲。
「あぁ。懐かしいな。」
「・・・」
言葉にならない咲の想いも玲はわかる。

「俺も、同じことを思ってた。」
あの頃、一緒に咲と仕事をしていた頃、玲はまだ何もできなかった。
決められている期限まで一緒にいる。
ただそれしかできなくて、その先の未来、どうしたらいいかわからず葛藤していた。

それが今は一緒にいられる。
未来をつかめそうなところに居る。