ストローをさしやすいように、カップを傾けたあたしの手に、ツキトの手が添えられた。 ぬくい体温。甘い香り。とろけるような笑顔。 ツキトに近付く度に、あたしの中の感情が増えてゆく。 相手を深く知ることは、悲しみに近付くことだと思っていた。 近付いたぶんだけ、相手を知れたぶんだけ、裏切られたときの悲しみは大きくなってしまうから。 相手の表情や行動をつぶさに観察して、嫌われないようにしていた。 近ければ、近いほど。 .