私の夢の中、何度も一緒に魔法の絨毯に乗ってくれたあの少年。

「どうにかして笑ってもらいたくて、その子になにかを渡した……気がするんです。大切なものだった気がするんですけど、その子が笑ってくれるならそれでいいやって……今思えばあれが私の初恋だったんだと思います」

「……顔や名前は覚えていないのか?」

「それが……その後すぐ高熱を出してしまって肝心なところは記憶にないんです。お話もしたような気がするんですけど……」

 うーん、と心の中で唸ってみて、ハッと気付く。いくら質問されたとはいえ、誠さんの肩に寄りかかって初恋の人の話をしてしまった。もしかしてこの手の話題は正直に話すものではないのかもしれない。優くんへのことといい、誠さんは意外とヤキモチ焼きな気がするから余計に。いや、でもお互いのことを知ろうという話だったし……。
 失言だったらどうしよう……私は内心わたわたしながら誠さんの反応を盗み見た。

「……まいったな」

 誠さんは口元に手をやって、耳をほんのりと赤く染めていた。
 予想外の反応に見つめてしまった私に気付いた誠さんは少し照れるように「他には?」と聞いてきた。
 そして私もバカ正直に「初恋以降は誠さんのご存じの通りです」とちょっと拗ねた口調で言った。

「そう。安心して、俺がその男の子に嫉妬することはないから」