本当は暁くんと慧のはずだったけど,暁くんは蹴ったから出ない。

昔なら無理矢理にでも出させられただろうけど,今はあくまで生徒の意志が尊重される。

ちょっとしたことで怒られ,ネットにさらされ,関係のない人間に叩かれる嫌な時代だから。

それから,慧とはあの日以降,普通に今まで通り接している。

変わったと言えばハグとかがなくなったくらい。

私はそれを,私が気にしないようにしているか,慧なりのけじめだと思っていた。

だから,応援も普通にする。



「じゃあね」

「うん,頑張って」



私達は準備に向かう慧を,それぞれ応援の言葉をかけて見送った。



『位置についてー』



係の女の子の声。

ーパパンッ

特徴的なピストルの音。

走順は,1年生,3年生,2年生。

その中でも,慧は……私達緑軍の,アンカーだ。