ーワアァァァァ



本当にそんな風に叫んでいる人なんて1人もいないと言うのに,人が多すぎるせいでそんな風に聞こえる。

遠くの人にはどれだけ声を張っても届かない。

高校生になって2回目の体育祭が,始まっていた。



「ほんっと暑いね。愛深は日焼け止めした?」

「私,気にしないから」

「あーね。確かに,愛深ちょっと黒い。合ってるからいいと思うけど」

「ありがと。でもたぶんそれは対策の問題じゃなくて,毎年炎天下の市民プールに毎日通ったりしてるからだね」

「……すごいね」



出番まで,陽菜とそんな会話をした。

誰が考えたのか分からない仮装リレーに,部活動対抗リレー,学年リレーに借り物競争。

去年と変わらないラインナップで,時々私達も出ながら,次々と終わっていく。

……走ってばっかだなうちの体育祭。

決められたスケジュールをこなしながら,そんなことを思った。