そのまま階段に座った。
凛空ちゃんに1回落ち着こうって言われて。
隣に凛空ちゃんも静かに座った。

「どうしたの?」

まろやかな凛空ちゃんの声は聞き心地がいい。

「…チョコレート、暁先輩に渡そうと…思ってたの。口実に乗っかって私も、自然にナチュラルスムーズに…」

「………。」

「でも上手く出来なかった」

笑って、私。無理にでも笑って。

「うん…、難しいよね」

「私には無理だったんだ…」

ここで悲しい顔をしたら涙がこぼれちゃう。

「…チョコレート渡さないの?」

「…っ、暁先輩好きな人がいるかもしれないんだよね。それは私じゃなくて他の人…だと思うから」

俯いてしまった。
俯いたらダメだってわかってたのにな。

下を見たら必然的にこぼれてしまうから。

「…でも、会長に好きな人がいても由夢が好きな人は会長なんでしょ?」

「………うん」

両膝を立て、その上に顔を埋める。

消え入りそうな小さな声、そんな自分の声初めて聞いた。

「だったら、迷うことはないんじゃない?」

それでも凛空ちゃんの声はいつもとおんなじで、見てなくてもどんな顔してるのかもわかった。


凛空ちゃんはいつも私の背中を押してくれる。


「由夢の気持ち、大切にしなよ」

「…凛空ちゃん」

ゆっくり顔を上げた。

ぐちゃぐちゃな顔してた、と思う。


だけど凛空ちゃんが笑って、大丈夫!って言ってくれたから。


もう一度立ち上がった。

「…私、暁先輩のところ行ってくる」

「おう!がんばれ!」

「ありがとう、聞いてくれて」

「うん」

もう一度、階段を上る。

チョコレートの入ったスクールバッグを持って、生徒会まで走った。



暁先輩に会いに。





“結局最後は勇気だから”