やっぱりこんなの恥ずかしいよ。


『嬉しいよ。夢芽ちゃんにそう呼んでもらえるの。ありがとう』


『あっ、いえ…』


私に名前で呼ばれて嬉しいの?


それって本心?


ただのお世辞?


本当はもっと若くて可愛い子の方が良かったんじゃないのかな…


普通は…そうだよね。


『夢芽ちゃんと、今日だけは…恋人でいられる』


え…?


ぽつりとつぶやいたその言葉。


速水店長の甘くて真剣な眼差しに何だかドキッとした。


ダメダメ!


こんなセリフ、男性は誰にでも言えるんだ。


うぬぼれちゃダメ。


速水店長の恋人役は、きっと誰でも良かったんだから。


『に、偽物の恋人ですね。偽物だとしても私なんかが相手ですみません。もっと素敵な人が良かったですよね』


もう本当、苦笑いするしかないよ。


『…偽物…』


その一言を発した後、店長の顔が固まったような気がした。


『速水店長…?どうかしましたか?』