『いえ、覚えてます。速水 慶太さん…ですよね』


慶太って…綺麗な名前だなって思ってた。


店長はちょっと驚いた顔をしてから、また笑顔になった。


『…良かった。全く忘れられてると思ってたから。いつも速水店長としか呼ばれないからね』


確かに。


でも、みんながそう呼ぶから…


『…すみません』


『別に怒ってる訳じゃないよ。謝らないで。ただ、今日は…慶太って呼んで欲しいんだ』


その時、電車が少し揺れた。


あっ!


よろけそうになる。


とっさに反応して、速水店長が手を伸ばして私を支えてくれた。


『大丈夫?』


すぐ目の前まできた店長の大人なシュッとした顔に、思わず心臓がキュッとした。


『す、すみません!ありがとうございます』


『ううん。夢芽ちゃん、ところで…?』


『えっ、あっ、あの…さっきの話ですよね。やっぱり、何だか恥ずかしいです』