『そんなそんな、私は全然大丈夫ですよ。そんな風に言ってあげれるなんて優しいんですね、速水店長』


『いや、優しいとか…別に普通だよ。あの、夢芽ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど』


そう言いながら、少し困ったような顔をしてる。


『お願いですか?』


『ああ、いや、まあ、せっかくこうして電車に乗って、女性と2人で買い物だから…ちょっとデートみたいな気分を味わいたいなって思って』


ニコッと微笑む。


冷静で大人な店長の笑顔も可愛いな。


『デート…ですか』


『勝手に思ってごめんね。まあ久しぶりだしね、こういうの。それで、擬似デートのついでに、僕のことを今日1日だけ名前で呼んでもらいたいんだ』


『え…名前で?』


急な注文にちょっと驚いた。


『そう、苗字じゃなくて、名前で』


『は、速水店長のお名前って…確か…』


『忘れてるよね、僕の名前なんて』