この状況をすぐには全然理解出来なくて、私はただそのまま呆然として動けなかった。


本当に何なの?


どうして?


どうして律君は好きでもない私を抱きしめてるの?


暗い夜道には誰もいなくて…完全に2人きり。


私は思わず律君を突き飛ばした。


『びっくり…した。そういう同情とかいらないから』


咄嗟に出た言葉。


心配してくれてる律君に失礼だとは思ったけど…


『大丈夫だから、私が本当にバカだったんだ』


止まらない鼓動を抑えて、私は必死に言った。


『夢芽は何も悪くないだろ?』


『そんなことない。私に魅力が無かったからあの人は浮気したんだし、私といても幸せじゃなかったんだよ』


少し取り乱してる自分が恥ずかしい。


だからこんな話するの嫌だったんだよ…


涙が…勝手に出てきて…


『お前にそんな悲しい思いをさせた奴…俺は絶対、許さない』


律君は、自分の両方のこぶしに強く力を込めた。