すごく驚いた。


私達はすぐに離れたけど、抱き合っていたのは見られたよね。


気まずさで充満したこの空間。


その空気を破るように律君は話し始めた。


『店長、すみません。俺、夢芽には店長が本社に入ること話しました』


速水店長は黙ってる。


無表情のまま何を考えてるの?


『あ、あの、律君は、自分だけがこの店に残るのはフェアじゃないって、ちゃんと店長のことも考えてって…そう言いたかったんです。でも私、律君と話してて自分の気持ちがわかったんです。私が本当に好きなのは誰かって。それは…』


『僕じゃない』


『えっ…あ、あの、ごめんなさい』


『謝らないで…謝られると余計に惨めになるしね。これから先の僕の人生の中に…夢芽ちゃんはいないってことなんだね』


速水店長の目…ちゃんと見れない。


私は頭を下げた。


それしか出来なかった。