『雪…そうだね。そうかも知れない。でも…それが溶けた後に何があるかなんて…』


あの人のせいで私の心の中に知らない間に雪が積もってたんだ。


それもたくさんの冷たくて悲しい雪が。


溶かすことも難しくて、ずっと積もったままだったんだね。


いったいどんな思いが隠れていたかなんて忘れてしまってる。


人を愛する気持ち…もし思い出せるのなら、ちょっとだけ誰かに甘えてみたい気もした。


この雪を溶かしてくれる誰かに。


もし、雪が溶けたら…


私はもう一度ちゃんと恋愛出来るのかな?


『その地面に俺の居場所があるって信じてる。その上にかぶさった邪魔でしかない余計な雪は、俺が全部ひとつ残らず溶かしてやるから。だから…これ以上、夢芽の心に冷たい雪は降らせないで』


そう言って、優しく私の頭に手を乗せてゆっくりと撫でてくれた。


『律君…』