「ハニー、こんな突然の訪問でも君なら大歓迎するよ。お茶でもいかがかな?」

相変わらずの態度でMr. Pinkが彩響を歓迎してくれる。まったく、この人も本当変わり者だよね…こんなことを思いながら、彩響はとりあえずソファーへ座った。徹夜の影響でいますぐにでも横になりたい気分だったけど、それより先に解決しなくてはいけないことがあった。姿勢を改めて、彩響が話を切り出した。


「あの、非常に申し訳ございませんが、家政夫を変えていただきたく。」

「おや?どうしたのかな?雛田くんがなにか無礼なことでも?」

「お互い合わないタイプかと思います。なので、変更をお願いします。」


あれこれ詳しい説明をするのも面倒くさいと思い、彩響はこう答えた。正直、あいつの態度が悪いとか、小言がうるさいとか、そういうのをベラベラ言うのも大人気ないと思った。そう、自分は仕事ができて、ガキの相手はなるべく避けたい、立派な『成人女性』だから。

彩響の発言に、Mr. Pinkが困った顔をする。そして、彼の口から出たのは、彩響が期待していたものとは別のものだった。


「残念だがハニー、それは出来ない。」

「え、どうしてですか?」

「契約書に書いてあった項目をもう忘れてしまったのかな?『契約した後、家政夫の交代は最低30日が経ってから可能』そう確かに書いてある。」