「やっぱりお腹が空くとイライラするんだって。今結構落ち着いたでしょう?」


そう言われて、彩響は今までのイライラがいつの間にか消えていることに気がついた。ムカつく状況が連続で続いていたのは事実だけど、普段以上にイライラして落ち着かなかったのはきっとお腹が空いていたせいだろう。そう思うと、さっき佐藤くんに大声を出したこととかがとても恥ずかしくなってきた。

(後で謝らないと…)


「何度も言うけど、まだ彩響ちゃんは若いからなんとか耐えているだけで、そのままだと35歳超えたときからやばくなるよ。きちんと食べて、体を大事にして。せめて一日一食でもきちんと食べて。これからは俺がお弁当作るから。」

「いや、これは仕方なく…」

「こんなに無理してお金稼いでも、病気になったりしたら結局そうやって稼いだお金も全部病院に捧げることになるんだよ?だからもう少し体に害にならない生き方を考えてみて。」


ふと、Mr.Pinkの言葉を思い出す。「元気になるものを食べろ」という言葉のどこが悪いのか、確かそう聞いた。そう、悪いことではない。ただこの10歳近く若い小僧に色々聞かされるのはなんだか負けた気になって嫌になるだけだ。そう頭では認めていても、彩響は素直にそれを言えなかった。


「じゃ、俺行くよ。今日も遅くなるの?」

「多分…」

「分かった、じゃあ頑張ってね。」


そう言って、雛田くんは素早く弁当箱を片付けて休憩室を出ていった。彼の姿が消えたあと、外でずっとこっちの様子を探っていた佐藤くんが入ってきた。一体どういうことなのか、気になって仕方がない顔をしている。彩響が先に説明した。