最初の印象は「鮮やか」、そして「綺麗」。赤と緑、その他さまざまな色のおかずたちがそれぞれの場所に入っているその様子は、どこかの雑誌で見たように素敵だった。彩響はいつかどこかで、「健康な食卓の色は虹色」と聞いたことを思い出す。まさしく、今このお弁等がそのような感じだった。

感心してじっと見ていると、向かい側の雛田くんがにっこり笑う。


「ほら、さっさと食べて。冷めちゃうよ。」


それでもまだ心の奥底に残っていたプライドを捨てられず、彩響は渋々箸を手に取った。そして、弁当の中から卵焼きを一個取り、口の中に入れる。そして素直に思った。


(卵焼きって、こんな美味しいものだったの…?)


元々自分は塩っぽい卵焼きが好きだけど、これからは甘い味付けの方が好きと言えるくらい美味しかった。次のおかずもどんな味がするか、気になってしょうがない。そういえば、お試し期間で来た時も、彼が作るものはすべて美味しかった。料理の知識はまったくないけど、この少年、いや青年の腕が確かなことは分かる。


「ゆっくり食べなよ。ほら、お茶。」


雛田くんがペットボトルのお茶を開けて渡す。いつの間にか夢中になって食べていたことに気付いて、彩響は顔が赤くなるのを感じた。少し戸惑ったけど、彩響は素直にペットボトルを受け取った。


「ありがとう。これ、すごい美味しいよ。」