「どこって、その辺の定食屋さんだよ。」

「なんの定食？魚？お肉？」

「お、お肉かな…。」

「焼いたもの？揚げたもの？味噌汁にはなにが入ってた？」


雛田くんがしつこく聞いてくる。何回誤魔化そうとしても、その疑いはなかなか終わらない。結局彩響は諦めて素直に答えた。


「あーもう！そうよ、食べてないよ！ドーナツ食べました、これで満足？」


彩響のギブアップサインに、雛田くんが笑う。そして手に持っていた弁当箱を渡した。


「じゃあ、これ食べて。」

「後で食べます。」

「ダメ、今すぐここで食べて。全部食べるの見終わるまで俺、帰らないから。」

「あなた学校とかないの？そんなに暇なの？」

「どうせ俺、暇な学生だもん。だから問題ない。」


そう言って、雛田くんが椅子に座る。「暇な学生」という言葉に妙な嫌味が入っているような気がしなくもないが、彩響はあえてなにも突っ込まずそのまま座った。窓越しからちょこちょこ見える佐藤くんの熱い視線を感じながら、弁当箱を開けると…。


「うわ…。」


「では、今日のお弁当を説明しまーす！今日はシーフードと舞茸のソテーがメインで、具材は焼きパプリカマリネでーす。もともとピーマン使うけど、彩響ちゃんピーマン嫌いっていうからパプリカにしました。で、そこに卵焼きと、ブロッコリー。味付けは豆乳マヨネーズとお酢。玄米ごはんだけど圧力炊飯器使ったから柔らかいはず。どう、美味しそうでしょう？」