まさか、この家政夫くんがここまでやってくるとは。やっと佐藤くんが言っていた言葉の意味が分かった。こんな高校生のような若い子が会社にいきなり現れたら、それは驚くでしょう。いや、それより佐藤くんにこの子のことをどう説明すればー。

そうでなくても仕事で頭が痛いのに、余計なことをやってくれた彼に又イライラする感情が沸き上がってきた。とりあえず、彩響はまず気になることから聞き出した。


「どうしてここが分かったの？」

「家にあった雑誌の名前ググったらすぐ出てきたよ。」

「あ…まあ、そうか。ーで？ここまでどうしたの？私になんか用でも？」

「用があるから来たに決まってるじゃん。はい、これ。」


そう言って、雛田くんがカバンからなにかを出す。丁寧に白いハンカチで包んだそれを開けた瞬間、彩響はそれがなんなのか分かった。


「お弁当…？」

「そう、どうせ今日もドーナツとコーヒーしか食べてないでしょう？朝ごはんも食べてないし、きっとお腹空いていると思って。」


そう言って、雛田くんがニッコリ笑う。図星だけど、確かにお腹は空いているけど、素直に認めたくない。そしてのんびりしながら昼休憩を取る心の余裕もない。彩響はこの状況をなんとか誤魔化す方法を考えた。


「いや、今日はちゃんと食べたから。」

「へえ、珍しい。なに食べたの？」

「て、定食。」

「どこで？」