私は田村部長の愛人だった。

 その頃の私にとって、田村部長は神にも等しい存在で、彼の求めに応えることが、自分の使命だとすら思い込んでいた。

 出張先のホテルに呼び出されて、カーテンを開け放った部屋で彼に抱かれた。

 プレゼンする資料を届けに行った先の、誰も来ない倉庫の奥で、立ったまま貫かれた。

 部長に求められれば、部長室の応接ソファーで、スーツのまま彼の上に乗った。

「綺麗だよ、早川くん。とても素敵な身体だ──」

「そうだろう、こうしてもらうのが嬉しいんだろう。そう、恥ずかしがらずに、全部私に委ねなさい──」

「早川くん、君は私のものだ。全部、私に──」

 そんな言葉を囁かれながら、嬉々として部長に抱かれていた自分を、叶うのなら消しゴムで消してしまいたい。

 私は、部長に愛されていると思い込んでいた。
 私は、部長に守られていると思い込んでいた。

 全ては、まやかしだった。