J・F・ケネディ国際空港に着いて、出発予定便のリストを調べてみると、この時間からの国際線のフライトは中南米方面に行くものしか無くて、ヨーロッパやアジアの主要都市に向かうには日の出を待たなければならなかった。

 九条くんはいつも朝7時に起きるから、彼が目を覚ます前に飛び立ってしまいたい。
 
 5時発のサント・ドミンゴ行きにまだ空席があるのを確認して、私は航空会社のカウンターで直接チケットを購入した。
 フライトまで、まだ3時間以上ある。

 サント・ドミンゴってどこだっけ?
 ロビーのシートに腰掛けて、のろのろとスマホを操作して、そこがドミニカ共和国の首都だということを知った。
 
 スマホの画面はドミニカについて、カリブ海と大西洋に面した、青い空と白い砂浜が広がる人気のリゾート地、という観光情報を表示していた。
 その一方で、中南米諸国の中では治安が安定しているが、旅行者相手の犯罪も頻発しているとも。

 いいかもしれない。
 
 白い砂浜にビーチパラソルを立てて、潮風に包まれて、何も考えずに過ごしたい。
 たとえばそこに、現地の遊び人がやって来て、言葉巧みに誘ってくれればなおいい。
 そして薄暗いベッドに連れ込まれて、めちゃくちゃに抱かれて、ボロ雑巾のように捨てられたい。
 
 どうせ私には、その程度の価値しかないから。