「えっと……」


直人はチラリと壁掛けの時計へ視線を向けた。


ここへ来てから1時間が経過している。


母親が作っていた夕飯はもうできているだろうし、外も随分と暗くなってきている。


そろそろ帰ったほうがいいに決まっていた。


けれど、母親は直人と剛が一緒にいるときだけ口うるさく言わないことを、2人共知っていた。


少しくらい遅く帰っても、剛が一緒なら問題ない。


「怖いのか?」


聞かれて直人はムッと頬を膨らませた。


「そ、そんなことない!」


本当はさっきから鳥肌がたちっぱしなのだけれど、素直に言えなかった。


「そうか。よし、じゃあ今から駅へ行こう!」


剛が勢いよく立ち上がるので、直人もつられて立ち上がってしまった。